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令和3年度研究評価部会報告

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令和3年度 東京都立皮革技術センター推進協議会・研究評価部会 報告

令和3年度第1回東京都立皮革技術センター推進協議会研究評価部会が、令和3年10月11日に開催された。令和4年実施予定の研究課題についての事前評価が行われた。

研究評価部会委員

外部より選任された委員(7名)

事前評価対象の研究テーマ

事前評価対象の研究テーマ(研究期間)

(1) 加水分解ケラチンによる豚ウェットブルーの改質
(令和4年4月1日~令和7年3月31日)

(2)靴の安全性~一般靴の靴底耐滑性~
(令和4年4月1日~令和7年3月31日)

研究テーマの事全評価結果等

加水分解ケラチンによる豚ウェットブルーの改質

(1)研究の目的・内容
    皮革は部位や個体ごとに品質に差があるが、その中でも東京都を主な生産地とする豚革は、腹部と尻部の機械的強度や風合いの差が特に大きい。そのため、再鞣しや加脂剤、コラーゲンペプチド(CP)などによって物性が改善されるものの、十分ではない。加水分解ケラチン(Hyd-Kr)に関する改質効果も報告されているが、Hyd-Krの化学的特徴や使用条件のみならず、改質効果の詳細は依然不明のままである。一方、豚革製造の脱毛物はHyd-Kr原料として高い潜在的価値を有するものの有効利用されずに廃棄されている。
  そこで、豚革製造の脱毛物からHyd-Krを調製し、その化学的特徴を明らかにするとともに、豚ウェットブルー(WB)に作用させることにより物性の改質効果を詳細に検証する。また、この結果に基づいてHyd-Krの豚革製造への適切な使用法を確立することを目的とした研究を行うこととした。

(2) 評価
  部会としてA(提案通り実施)と評価する。コラーゲンペプチドに代わりうる脱毛副生物から加水分解ケラチンを開発し、豚ウェットブルーの改質を達成することは大いに価値があることといえ、研究成果の利活用が強く期待される。

靴の安全性~一般靴の靴底耐滑性~

(1) 研究の目的・内容
  歩行中の滑りによって転倒する事故は紳士靴・婦人靴問わず、すべての靴種で発生している。この事故を検証する試験は耐滑性であるが、現在、ISO 13287とJIS T 8106が制定されている。しかし、ISO 13287耐滑性試験方法はこの数年で変遷し、以前とは試験方法が異なる。また、JISにおいても2016年に「安全靴・作業靴の耐滑試験方法」が安全靴・作業靴に特化した耐滑試験方法になっており、幅広い靴種に対応していないのが現状である。
  靴底の素材はバリエーションが増えて、技術相談や試験として台東支所に持ち込まれる件数が多くなっている。安全に歩行するため、滑りにくい靴などの付加価値を考察するためにも、靴底の耐滑性能データを台東支所として把握する必要がある。
そこで、靴底(市販靴、靴底材料、トップピース)の耐滑性能を測定し、靴材料としての特性を把握することにより、多様化している靴底の耐滑性の違いを明らかにすることとした。

(2) 評価
  部会としてA(提案通り実施)と評価する。一般靴の靴底の耐滑性に関して、靴底素材の差異、気象条件による差異、氷上を含む床材の差異などを適切に評価することは、安全な靴の製造や、利用者の安全性確保に大きく貢献するといえる。