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平成26年度研究評価部会報告

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平成26年度 東京都立皮革技術センター推進協議会・研究評価部会 報告

平成26年度第1回東京都立皮革技術センター推進協議会研究評価部会が、平成26年6月18日に開催されました。今回は、平成25年度に終了した研究課題についての事後評価が行われました。

研究評価部会委員

外部より選任された委員(7名)

事後評価対象の研究テーマ

(1)厚鞣しによるライニング用革の製造
(平成24年4月1日~平成26年3月31日)

(2)衣料用革の風合い設計 準備~鞣し工程について
(平成23年4月1日~平成26年3月31日)

(3)皮革からのDNA抽出方法の検討
(平成23年4月1日~平成26年3月31日)

(4)靴材料の経時変化に関する研究-ヒールと表底
(平成24年4月1日~平成26年3月31日)

各評価結果

厚鞣しによるライニング用革の製造

(1) 研究の成果
豚皮から厚鞣しによりライニング用革を製造した。再石灰漬け時間及びベーチング時間の延長に、水洗工程を追加することにより、地脂の脱脂効果が高まった。さらに、ノニルフェノール系界面活性剤を使用することなく、アルコール系、溶剤系界面活性剤の使用でもウェットブルーの地脂を2%以下とすることができた。試作革はJISの靴裏用革の規格を満たし、面積も市販革と遜色なかった。試履き試験の結果、履き心地等に関して、薄鞣し革との明らかな差異は認められなかった。以上の結果から、厚鞣しにより試作した革は、ライニング用として十分な性能を有することが明らかになった。

(2) 評価
部会としてA(良い)と評価する。豚皮の厚鞣しで問題とされた脱脂の問題を克服し、通常の製革標品と同等以上の品質が達成できたことは、実用化に向けて有意義であり、良好と判断された。

衣料用革の風合い設計 準備~鞣し工程について

(1) 研究の成果
製造工程(準備工程、鞣し工程)における処方を変化させて製造した衣料用豚スエードについて、KES力学特性、温熱特性等を計測し、処方の違いが革の風合いに及ぼす影響を調べた。準備工程の脱毛剤は、硫化ナトリウムを使用した方が水硫化ナトリウムを使用するよりも柔軟性が高く、ふくらみがあり、なめらかな革が得られた。脱灰剤は、硫酸アンモニウムを使用する方が塩化アンモニウムを使用するよりも柔軟性が高い革が得られた。鞣し工程では、クロム含有量が多いほど圧縮しやすく、なめらかな革となる傾向であった。したがって、脱毛剤及び脱灰剤の種類、クロム鞣剤の添加量を変えることによって、求める風合いの革を製造できることが明らかとなった。

(2) 評価
部会としてA(良い)と評価する。衣料革の風合い因子を製革工程別に検証し、準備工程及び鞣製工程における因子を明らかにしたことは、風合い設計に大きく寄与し、良好と判断された。

皮革からのDNA抽出方法の検討

(1) 研究の成果
DNAを破壊しない温和な条件下で、微量のDNAを高い確率で抽出する方法を検討した。前処理としての細切・粉砕や脱クロムは、DNA抽出確率に影響せず、必要なかった。微生物、タンパク質分解酵素(コラゲナーゼ等)、酸、アルカリを用いて皮革を可溶化する方法を検討したところ、コラゲナーゼ産生微生物のVibrio hollisae 1706B株を用いて皮革を可溶化することで、高い確率でDNAを抽出できた。DNAの増幅には、肉種鑑別用のDNA合成試薬が、DNAの抽出確率が高く、扱いやすかった。したがって、微生物で皮革を可溶化し、肉種鑑別用試薬を用いることで、高い確率でDNAを抽出できることが明らかとなった。

(2) 評価
部会としてA(良い)と評価する。革の動物種の判別に新たにDNA鑑定を導入するに当り、革からのDNAの抽出・検知が困難な状況の中で、種々検討し、今後のDNA鑑定の目途を立てたことは、大いに有意義であり、良好と判断された。

靴材料の経時変化に関する研究-ヒールと表底

(1) 研究の成果
靴材料としての性能に優れたアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂ヒールと、表底用加硫ゴム(主成分はスチレン-ブタジエンゴム、SBR)について、配合割合や成分が異なる数種類の試料を製作し、劣化促進処理による性状変化を調べた。国産ABS樹脂ヒールの強度、耐久性の高さを確認したが、未塗装のヒールでは屋外暴露とキセノンアーク灯光照射後に、顕著に強度が低下した。表底用加硫ゴムも耐久性の高さを確認したが、表面き裂防止剤不添加、非補強性充填剤の配合比率が高いゴムは劣化が早い可能性が認められた。したがって、品質の良い国産ABS樹脂ヒールを用いること、ヒールに塗装を行うこと、表底材料としての性能に優れた加硫ゴムを用いることが、着用中や保管中の事故防止に繋がることが示唆された。

(2) 評価
部会としてA(良い)と評価する。ヒールや表底の劣化による使用中の事故の誘発防止に関係するデータが蓄積できたことは、大いに有意義であり、良好と判断された。