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皮革技術センター [皮革全般]

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平成28年度研究評価部会報告

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平成28年度 東京都立皮革技術センター推進協議会・研究評価部会 報告

平成28年度第1回東京都立皮革技術センター推進協議会研究評価部会が、 平成28年6月7日に開催された。平成27年度に終了した研究課題についての事後評価が行われた。

研究評価部会委員

外部より選任された委員(7名)

事後評価対象の研究テーマ

(1) DNAによる皮革の鑑別技術の開発
(平成26年4月1日~平成28年3月31日)

(2) 熱可塑性ポリウレタン表底及びトップピースの性状調査
(平成26年4月1日~平成28年3月31日)

各評価結果

DNAによる皮革の鑑別技術の開発

(1) 研究の成果
繊維構造が類似しているため判別が困難とされている牛革と馬革、羊革と山羊革を対象に、皮革からDNAを抽出し、それに基づく畜種鑑別ができるか検討した。合成酵素(Taqポリメラーゼ)は、ある特殊な性能を有している製品だけが皮革から抽出したDNAを増幅させることが確認できた。牛革、馬革、及び羊革は、当センターが開発した抽出方法及び公知の肉種プライマーを使用することによって鑑別することができた。山羊革は、ヒツジとヤギのDNA塩基配列情報に基づき独自に設計したプライマーを用いて2段階で確認した場合に、鑑別することができた。以上の結果、牛革と馬革、羊革と山羊革について、DNA鑑定によって確実に畜種を鑑別することが可能となった。

(2) 評価
部会としてA(良い)と評価する。牛革、馬革、羊革、山羊革、特に従来から困難と考えられていた羊革と山羊革のDNA鑑別を可能とする技術開発を達成したことは、特に優れている。

熱可塑性ポリウレタン表底及びトップピースの性状調査

(1) 研究の成果
日本国内で製造された主成分及び硬度が異なる熱可塑性ポリウレタン及び市販の低価格靴から採取した表底について性状調査を行った。国産ポリウレタンは、低温処理、オゾン暴露、屋外暴露、キセノンアーク灯光照射、土壌埋没による影響は認められなかった。ポリオールがエチレングリコールであるポリエステル系ポリウレタン及びポリエーテル系ポリウレタンは高温高湿処理により耐摩耗性が低下し、アルカリ溶液浸漬により外観が変化した。一方、ポリオールがブタジエングリコールであるポリウレタンはこれらの処理の影響を受けず、優れた素材であることが示唆された。収集した低価格市販靴114点の表底素材は、ポリウレタン35点(30%)、SBS 37点(33%)、EVA 24点(21%)、その他18点(15%)であった。ISOに定められた表底の耐摩耗性の性能要件を満たさないものが58点(50%)あり、そのうち52点は中国産であった。特に1,000~2,000円の低価格帯に属する市販靴に関しては66点中42点(64%)という高い比率で性能要件を満たしていなかった。

(2) 評価
部会としてA(良い)と評価する。靴の安全性に深く関与する表底及びトップピースの性状について、各種素材とともに多数の市販靴を収集して、その耐久性を中心に明らかにしたことは、靴メーカー及び消費者の適切な素材選びに大いに有用である。