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皮革技術センター [皮革全般]

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革と革製品に関するQ&A

コンテンツ

革と革製品に関するQ&A(参考資料:革がわかるQ&A 150選 日本タンナーズ協会、日本皮革技術協会)

[革とは]

[革の製造]

[革の特性]

[革製品のクレーム]

[認定ラベル・有害物質規制]

革とは

Q01 皮と革の意味は違うと聞きましたが、正しい使い分けを教えてください。

A01 皮革は一般に「かわ」と呼ばれますが、「皮」は動物の最外層の組織をはぎとったもので、「革」はそれから毛を除き、「鞣し(なめし)」を行ったものを指します。英語では、前者はskin、hideを用い、後者はleatherを用います。よく「皮靴」や「皮製品」という記述をみかけますが、正しくは「革靴」、「革製品」と記述すべきでしょう。「皮」を「革」に変える「鞣し」とは、鞣し剤により皮の主成分であるコラーゲンの分子間に橋かけを行うことです。鞣し剤には、クロム、アルミニウム、植物タンニン、アルデヒドなどがあり、その作用機構は同一ではありませんが、コラーゲン間に架橋結合を形成するという点では一致しています。

Q02 革の定義を教えてください。

A02 イギリスの規格(Glossary of Leather terms, BS2780:1983, +A1:2013)では、革を次のように定義しています。
「オリジナルの線維構造を多少とも元のまま持ち、腐らないように鞣した皮革に対する一般用語。毛は除かれるか、除かれない。鞣しの前あるいは後に層状に漉かれたり分離されたりした皮からも製造されるが、鞣した革を機械的及びあるいは化学的に繊維状、粒状、小片あるいは粉状に粉砕し、シートあるいはほかの形状にしたものは皮革と定義しない。表面塗装した革の場合、塗装膜の厚さは0.15 mm以下でなければならない。」
日本エコレザー基準では、(1)銀面を有する銀付き革、または革繊維構造を損なわない(粉砕などしない)銀付き革の副生物である床革であること、(2)仕上げ・塗装膜厚が0.15 mm以下であり、なおかつ断面構造の70%以上が革であること、の2つの条件を満たすものとしています。

Q03 革に利用される動物は、どのような動物でもよいのですか。

A03 「皮」が「革」として利用される動物は、せきつい動物に限られ、その中でも、ほ乳類(牛、馬、豚、羊、山羊など)、は虫類(ワニ、ヘビなど)がよく利用されています。鳥類(オーストリッチなど)、両生類(カエル)、魚類(サメなど)も少しですが利用されています。

Q04 ワシントン条約は革と関係がありますか。

A04 ワシントン条約とは、「Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」で、野生動植物保護のために設けられた国際協定です。頭文字をとって、CITES(サイテス)と呼ばれています。その主旨と目的は、乱獲などによって絶滅のおそれがあり保護が必要と考えられる野生動植物を附属書I、II、IIIの3分類に区分し、附属書に掲載された種についてそれぞれの必要性に応じて国際取引の規制を行うこととしています。規制の対象には、生体はもちろんのこと、それらを用いた産物、つまり毛皮のコートや置物、は虫類のハンドバッグ、象牙細工などの加工品も含まれます。野生の動物で特に珍しい動物からの皮については、関係局(経済産業省)に問い合わせ、確認を得ることが望ましいでしょう。

爬虫類

Q05 人類はどうして皮を利用し始めたのですか。

A05 皮は主に食肉の副産物として生産されます。人類が肉食を続ける限り、皮は副産物として産出され続けます。皮を革として使用することを控えると、今度は大量の皮を廃棄物として処理することが必要となります。皮を革として利用することは、副産物の有効利用として人類の歴史の中でも最も古いものの一つとして考えられ、枯渇する資源を原料とする石油製品とは根本的に異なり本来環境に優しい製品といえます。
皮革製造で大量の汚水や臭気等を排出するので公害の元のように考えられがちですが、日本では、鞣し工場からの排水は個別企業の排水処理施設あるいは下水道に排出され終末処理場で浄化されて河川、海に流入します。したがって、皮革排水が河川を直接汚染していることはありません。臭気は原皮の臭気あるいは脱毛工程での硫化水素臭、脱灰工程でのアンモニア臭が主な発生源ですが、広範囲に拡散することはありません。

革の製造

Q06 鞣しの意味、鞣し剤の種類を教えてください。

A06 「鞣し(なめし)」とは、皮のタンパク質を化学的に固定・安定化させ、腐敗しにくくし、その結果、柔軟性、通気性、耐水性、耐熱性などに優れた性質を革に与える製革工程の一つです。以下に主な鞣し剤の種類を示します。 1)クロム鞣し剤:鞣しが短時間で済み、経済性に優れ、柔軟性・保存性・耐熱性・染色性が良いなどの優れた特性があり、現在では最も多く用いられています。クロム鞣しした革は水色をしており、ウェットブルーと呼ばれます。 2)アルミニウム鞣し剤:古くからある鞣し剤で、白色で柔軟な革が得られますが、単独では耐水性や耐熱性に乏しく、他の鞣し剤と併用するコンビネーション鞣しに利用されます。 3)ジルコニウム鞣し剤:比較的新しい方法で、充実性のある、しっかりした銀面 を持つ白色の革が得られるのが特色です。 4)植物タンニン鞣し剤:植物の樹皮などから抽出したタンニンを主成分とする鞣し剤で、古くから用いられています。クロム鞣し革に比べて、伸びや弾性が少なく、耐熱性が幾分劣りますが、可塑性に富んで成形性に優れた革ができます。靴の底革、ヌメ革、クラフト革などに利用されます。 5)アルデヒド鞣し剤:単独で用いられることは少なく、他の鞣し剤とのコンビネーションなめしに用いられます。アルデヒドの中でもグルタルアルデヒドが多く用いられ、ふくらみのある、耐水性、耐汗性、耐洗濯性に優れた革になります。

Q07 クロムというと有害なイメージがありますが、クロム鞣し剤に害はないのですか。

A07 革の製造に用いられるクロム鞣し剤は3価のクロム塩で、その水溶液は緑色から紫色です。3価クロムは人体の必須微量元素でもあり、毒性はほとんどないものとされています。有害とされているクロムは6価のクロム塩で水溶液は黄色から橙赤色をしています。代表的な6価クロム塩である重クロム酸ナトリウムや重クロム酸カリウムは、皮膚粘膜を刺激して腐食し、さらに潰瘍を生じさせるなど危険を伴います。かつては、重クロム酸ナトリウムのような6価のクロム液に硫酸酸性等で還元剤(グルコースや亜硫酸水素ナトリウム)を加えて、3価のクロムに還元して使用していた時代もありました。現在は、市販の粉末クロム鞣し剤(3価)が用いられています。

Q08 非クロム鞣しとはどういうものですか。

A08 現在、皮の鞣しにはクロム鞣し剤が最も多く用いられています。通常のクロム鞣し剤は無害ですが、使用済みのクロム鞣し革製品を焼却すると一部は有害な6価クロムに変化することが認められており環境汚染の可能性があります。そこで、クロム鞣し剤を使用しない新しい鞣し方法が開発されており、この方法を非クロム鞣しと呼びます。 非クロム鞣しに使用される鞣し剤としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタンなどの金属鞣し剤、アルデヒド類及び合成鞣剤、植物タンニン鞣し剤などが挙げられます。 非クロム鞣しの革は、クロム鞣し剤を全く使用しないので、排水や廃棄物処理が容易になります。

革の特性

Q09 革の最も優れている特性は何ですか。他の素材ではまねができないのですか。

A09 革の優れた点として、1)保温性があり、触ると温かみがある。2)吸湿性、放湿性があり、着用時に快適な環境が得られる。3)気温による風合いの変化が少ない。4)適度の可塑性と弾性があるため、各種の製品に加工できる。5)繊維構造は丈夫で、銀面模様が美しく、感触もよく重厚な感じを与える。6)切り口が解れてこない。といったことが挙げられます。しかし、価格が不安定、カビが生えやすい、機械的な特性が不均一、熱や水に弱い等の欠点もあります。革の特性を模倣するために、様々なタイプの合成皮革が開発されています。これらは、基材の織物に、ナイロンやポリウレタンなどの表面層をつけたもので、耐水性、色落ち、軽さなどは天然皮革の特性より優れているものもあります。基材の不織布にポリウレタン樹脂を含浸させた人工皮革は、より一層革の特性に近づけて開発されて、見分けにくくなっていますが、吸・放湿性などが劣っており、快適な環境が得られません。

Q10 革の耐熱性について教えてください。

A10 生皮の耐熱性は革の種類によって大きく異なりますが、哺乳動物では約60℃です。鞣しによって革の耐熱性は上昇しますが、鞣し方法によって耐熱性は異なります。標準状態(水分約15%程度)では約120℃以上と高い耐熱性を持っています。液中熱収縮温度(革を水に十分に浸した状態での耐熱性)を見ると、クロム鞣しは80~120℃、植物タンニン鞣しは70~90℃、ホルムアルデヒド鞣しは63~73℃となっています。
水に濡れると革の耐熱性は低下します。したがって、乾燥状態ではアイロン掛けも注意深く行えば可能です。しかし、蒸気アイロンの使用、革製品の水に濡れた部分のアイロン掛け、水に濡れた靴を直射日光やストーブで乾かすようなことは避ける必要があります。いったん熱変性を起こした革は硬くもろくなり修復不可能です。

Q11 革底の特徴を教えてください。

A11 靴底には、種々の素材が使用されています。合成底が普及するまでは革が代表的な表底材料でした。現在では、紳士靴、婦人靴とも高級品にのみ用いられています。海外では、合成底の普及があっても、一定の革底が利用されており、靴底としての優秀さが認められています。底革は通常成牛皮を植物タンニンで鞣したものです。革底は、保温性・断熱性がある、足になじみやすい、透湿性に優れている等の利点があります。これに対して、耐摩耗性や耐水性に劣る、カビが生えやすい、価格が高い等の欠点もあります。特に耐摩耗性の低さのため、摩り減りやすいので注意が必要です。

靴底

Q12 使用しているうちに革の傷が目立ってきましたが、なぜですか。

A12 革には、生体に基づく独特の模様があります。毛穴、とら(首から胸にかけてのシワ)、血筋、リブマーク(肋骨の跡)、掻き傷、焼印(ブランド)、虫穴は、天然皮革の特徴でもあります。日本では仕上げを厚くし塗装で隠していることが多々あります。着用しているうち、あるいはクリーニング後に現れクレームとなることがありますが、本来は生体に存在する模様でもあり、天然皮革の証拠でもあります。

革製品のクレーム

Q13 革が色落ちや色移りしやすいのは、なぜですか。

A13 革は、耐熱性が低く風合を損なうため高温での染色ができないこと、染色後の革に柔軟性を付与するために加脂剤を添加するので革と染料との結合が弱くなること、革のタンパク質を損傷するために強アルカリでの染色ができないこと等のために、染色堅ろう度の優れた革を作ることが難しくなっています。高堅ろう性染色に関する研究も進み、染色堅ろう度が改善されてきていますが、依然として色落ちに関するクレームは革のクレームの中心です。

Q14 店頭に陳列していた革製品の色が褪せてきました。直射日光は当たっていませんが、革は退色しやすいのですか。

A14 紫外線により染料分子が破壊されるため、室内であっても蛍光灯に曝されることにより退色します。特に、染料の使用量が少ない淡色の革は退色しやすいので、注意が必要です。また、共存物質にも影響されます。顔料は染料に比べて耐光性が良いので、顔料による塗装仕上げ革は素上げ革より耐光性が良く、光に不安定な植物タンニン鞣し剤や再鞣し剤が含まれていると、退色しやすい傾向があります。

Q15 ジャケットのポケット口から破れたり、スカートのスリット口が裂けたり、ミシン切れが生じたりします。革の破損はなぜ起こるのですか。

A15

破損例の画像

破損例

破損例の画像

破損例

革の強度は、主に、革を構成する繊維の太さと絡み具合によって決まります。これらの構造は、畜種、品種、性別、飼育方法、産地などによって異なっています。また、一枚の革の中でも、部位によって構造が異なっています。たとえば、腹部(ベリー部)は繊維が粗く、強度も弱くなっています。牛や馬などの大きな動物は皮が厚いので、本来は強度に優れていますが、軽くするため薄く漉くことによって、網状層の厚さが減少し革の強度が低下します。また、羊は品種によって性質が大きく異なります。特にウールシープは被毛の数が多く、繊維の発達も弱くなっています。また、網状層と乳頭層のつながりが疎で、この部分に脂肪が多く沈着しています。革製造の工程で脂肪分が除去されるため、この部分に空隙が生じ二層にはく離しやすくなります。さらに、革衣料を縫製する上で、糸の太さや針目数などの縫製条件が、素材に合っていない場合にも、縫い目による革切れが生じるので注意が必要です。購入前に、着用により力がかかるポケット口やスカートのスリットなどの縫い目をよく観察する必要があります。

Q16 革の表面のひび割れは、なぜ起こるのですか。

A16 革のトップコートに用いられるニトロセルロースラッカーは、屈曲や引き伸ばしに耐えるために可塑剤を使用しています。長期間の使用によって可塑剤の劣化が原因でラッカー膜が硬化し、ひび割れをおこす場合があります。

Q17 革衣料が雨に濡れたら、硬くなり、風合いが変化しました。革は水に濡らしてはいけないのですか。

A17 素上げや薄い塗装仕上げを施した革は、水に弱いものです。雨に濡れた革は水分によって膨らみ、水分が蒸発して乾燥すると収縮が起こり、硬化し、風合いが損なわれます。また、革は部位により繊維構造の差があるため、収縮の度合いも部位によって異なり、型くずれの原因になります。

Q18 革製品に白い粉状のもの、あるいは白いカビ状のものが吹き出してくることがありますが、これは何ですか。

A18 白い粉状またはカビ状のものを総称してスピューと呼んでいます。スピューの主成分は塩または脂肪です。水拭きして消え、熱で溶けず、シンナーなどの有機溶剤で拭いても消えないのが塩スピュー(ソルトスピュー)、水拭きして消えず、熱や有機溶剤で拭くことによって消えるものが脂肪スピュー(ファットスピュー)といいます。塩スピューは、靴に多く発生します。革が濡れ、革中に浸透した水分が蒸発するとき、含有する塩を表面に運びます。これが乾燥した後、白い粉として表面に現れます。塩の由来は、革製造工程中で使用されたものが多く、発汗による塩分もあります。この白い粉状の塩スピューは水で容易に除くことができますが、革中に塩が含まれる場合は、完全に除くことは困難です。対処法としては革に防水性を付与して、水分の浸透を防ぐこと、浸透した水分は早めに除去することなどがあります。脂肪スピューは、衣料革に多く発生しています。固形パラフィン、固形シリコンや高級脂肪酸など高融点の脂肪を含有する加脂剤を使用した場合や、原皮中に含まれる脂肪の除去が不十分な場合に発生しやすくなります。ドライヤー等の温風を当てると簡単に消えます。通常、加脂剤によるスピューは革全面に、体脂肪によるスピューは動物の背線周囲に偏在しやすいのが特徴です。脂肪スピューも完全に防ぐことは困難です。

Q19 靴や革製品を保管しておいたところ、部分的に収縮し硬くなっていましたが、なぜですか。

A19

収縮例の画像

収縮例

収縮例の拡大画像

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保管中に革製品が収縮したトラブルの原因としては、除湿剤の付着が考えられます。市販の除湿剤の成分である塩化カルシウムが湿気を吸って液状になり、それがこぼれて革製品に付着し、革タンパク質を変性させたためと考えられます。また、雨で濡れた靴を乾燥させる目的で、靴の中に塩化カルシウム系の除湿剤を入れたときに革が収縮することもあります。塩化カルシウムの付着が原因の場合は、損傷部分は硬くなり、光沢も無くなり、しわがよっています。一度収縮した革を直す方法は無いので、湿気を吸って溶液状になった塩化カルシウムを革製品に付着させないように十分注意する必要があります。このような事故を防ぐためには、革製品の乾燥にはシリカゲルを用いることが望ましいでしょう。

Q20 雪道を歩いて濡れた靴を保管しておいたら、革の部分が収縮して硬くなっていましが、なぜですか。

A20 道路に融雪剤として塩化カルシウムが撒かれている場合、解けた雪で革が濡れると、塩化カルシウム系除湿剤の付着と同様に革の収縮が起こることがあります。一度収縮してしまった革は元には戻らないので注意が必要です。また、革は濡れると耐熱性が低下します。そのため、濡れた靴をストーブなどに近づけて熱をかけると収縮する場合があります。この場合も元に戻すことは出来ないので、濡れた革を乾燥させようとストーブや直射日光に当てるのは避ける必要があります。

Q21 は虫類(ワニ、トカゲ)革のバッグを購入したのですが、品質表示もなく、偽物のような気がします。本物と偽物の見分け方を教えてください。

A21 は虫類(ワニ、トカゲ)の模様をした「革製品」の偽物には、型押し革(牛革や豚革の表面に、は虫類模様を型押ししたもの)、レザーボード・ボンデッドレザー(革屑を粉砕した繊維に合成樹脂を混合して、シート状に固めた後、は虫類模様を型押ししたもの)、合成皮革(基布層とポリウレタンなどの合成樹脂層からなるシートに、は虫類模様を型押ししたもの)があります。いずれの材料でも、型押しで模様を成形しているため、模様が画一的です。これを念頭において、以下のことについても調べるとよいでしょう。1)模様、しわ:は虫類独特の鱗模様は、形状や大きさが不規則で、部位により異なっており、鱗板の間のしわは深く切れこんでいます。一方、偽物の鱗板様の凹凸は浅く、切れ込みが少ないという特徴があります。2)切り口(繊維構造):本物の繊維構造は、薄い織布が重なりあったような構造をしています。型押し革では、牛革や豚革の繊維構造が観察されます。レザーボード、ボンデッドレザー、合成皮革では、繊維の交絡が見られません。全日本爬虫類皮革産業協同組合では、ワシントン条約に基づき正しく輸入された皮革を使用して日本で造られた製品にJRAタッグをつけ、本物の日本製品であることを表示しています。

爬虫類

Q22 下駄箱に入れておいた靴の底(ポリウレタン底)が、ぼろぼろになって割れていましたが、なぜですか。

A22 靴底には様々な材料が使用されています。ポリウレタン底は軽く、滑りにくく、耐摩耗性、耐油性、耐薬品性に優れているため広く使われています。ポリウレタンにはエーテル系とエステル系の2種類があります。エステル系は物性に優れていますが、加水分解性があります。そのため、経年劣化を生じ、ぼろぼろに崩れたり、べたついたりすることがあります。加水分解を進行させる条件としては、1)高温と多湿、2)足から出る汗、3)触媒(ポリウレタン中の残留物)、4)薬品(酸性やアルカリ性の薬品)、5)カビなどが考えられ、これらの相乗効果によって促進されます。なお、エーテル系ポリウレタン底は、エステル系に比較して引裂強さが劣ります。したがって、靴底意匠の凹凸を深く鋭角に設計したときなど、着用による曲げによって凹部の谷の部分から亀裂が生じることがあります。

靴底

Q23 婦人靴の細いヒールは素敵ですが、ヒールが折れたり取れたりしませんか。

A23 歩行中のヒールの破損や離脱は、転倒や事故につながるため深刻な問題です。ヒールに問題がある場合の主な原因は、ヒールのデザインあるいは素材が不適切であること、取付けが不十分であること、過度に着用していることなどが考えられます。ヒールのトップピースがすり減ったり、ヒール自体がすり減り短くなったりしたのでなければ、ヒールのデザイン、素材、補強芯に問題があると考えられます。また、ヒール取付けには材質、サイズ、取付けの位置、釘の長さ、中敷きの材質や厚さなど様々な要因が関係しています。過度なデザイン優先でヒール取付け強度が弱くならないように注意が必要です。そのためには、製品化する前の品質検査を十分に行う必要があります。

婦人靴

認定ラベル・有害物質規制

Q24 日本エコレザーとは何ですか。

A24 日本エコレザー基準に適合し、「製品の製造、輸送、販売、再利用」まで一連のライフサイクルの中で、環境負荷の低減に配慮し、環境面への影響が少ないと認められる革材料のことを指します。
日本エコレザーの対象となる革は、食用となる家畜動物の革(牛、馬、豚、羊、山羊)、床革、取引証明書のある野生動物や養殖動物の革です。塗膜の厚さが0.15 mmを超える革、全層の30%以上が革以外のもの、革屑を再生したものは、対象となりません。
2006年に、臭気、遊離ホルムアルデヒド、抽出重金属7項目、ペンタクロロフェノール、発がん性芳香族アミン、染色堅ろう度2項目の計13項目について、特定非営利活動法人日本皮革技術協会によって基準値が定められました。
認定機関は、社団法人日本皮革産業連合会です。申請には、基準値に適合した分析結果、発がん性染料の不使用宣言、排水及び廃棄物の適正処理の証明書、使用薬品のリスト及び安全データシート(SDS)が必要です。

Q25 革中の有害化学物質についてどのような規制がありますか。

A25 日本では、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(昭和48年10月12日法律第112号)において、平成28年4月1日から、24種類の特定芳香族アミンを生成するアゾ染料についての規制が始まりました。アゾ化合物を含有する染料が使用されている革製品(毛皮製品を含む。)のうち、下着、手袋、中衣、外衣、帽子及び床敷物が、対象になります。基準値は、アゾ化合物の特定芳香族アミンとしての含有量 30 μg/g以下となっています。
化学物質規制の動きは、ヨーロッパを中心に始まり、アジア各国へ波及してきたと言えます。欧州連合(EU)では、REACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals、化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則)が、2007年6月1日より実施されました。欧州化学物質庁(ECHA)が運用し、対象が全製品に拡大し、禁止物質も徐々に増えています。皮革について考えられる付属書X VIIの禁止物質は、アゾ染料、6価クロム、ホルムアルデヒド、ペンタクロロフェノール、発がん性染料、ノニルフェノール、フマル酸ジメチル、抽出重金属、揮発性有機化合物等です。