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皮革技術センター [皮革全般]

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平成25年度研究評価部会報告

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平成25年度 東京都立皮革技術センター推進協議会・研究評価部会 報告

平成25年度第1回東京都立皮革技術センター推進協議会研究評価部会が、平成25年6月18日に開催されました。今回は、3件の研究課題の事前評価が行われました。

研究評価部会委員

外部より選任された委員(7名)

事前評価対象の研究テーマ

(1)加脂剤の種類や添加量が製品革の特性に及ぼす影響
(平成26年4月1日~平成29年3月31日)

(2)DNAによる皮革の鑑別技術の開発
(平成26年4月1日~平成28年3月31日)

(3)熱可塑性ポリウレタン表底及びトップピースの性状調査
(平成26年4月1日~平成28年3月31日)

各評価結果

加脂剤の種類や添加量が製品革の特性に及ぼす影響

(1) 研究の目的・内容
工場では職人が長年の経験と勘に基づいて、求める風合いの革を製造しているのが現状であり、これまで、製革工程を通じて製品革の風合いや温熱特性に及ぼす影響を系統的に調べた例はほとんどない。当センターでは、豚衣料用革の準備工程から鞣し工程を取り上げ、処方の違いが製品革の風合いや温熱特性等に及ぼす影響を認めた。一方、加脂工程も製品革の風合いや温熱特性に顕著に影響を及ぼすことが考えられるが、豚革においては検討されていない。そこで、加脂剤の種類や添加量の違いが革の風合いや温熱特性に及ぼす影響を明らかにし、製造工程の合理化に役立てることを目的として研究を行う。加脂剤の種類と添加量を変化させて製造した衣料用豚革について、物性や温熱特性等の計測を行い、加脂剤と各計測値との関係性を調べる。

(2) 評価
部会としてA(提案通り実施)と評価する。本研究が推進され、求める風合いの革が提供できる合理的な製造が可能となる成果が待たれる。

DNAによる皮革の鑑別技術の開発

(1) 研究の目的・内容
皮革は繊維構造や銀面模様の差を利用して種類を推定しているが、この方法では、羊革と山羊革のように構造が類似しているものの判別は非常に困難である。食肉や穀物等では、精度が高く再現性もあるDNA鑑定が広く利用されているが、皮革からDNAを抽出することは困難であると考えられていたため、皮革でのDNA鑑定は実用化されていない。しかし、品質表示を適正に行うために、製品の流通段階で確実な畜種の判定を求められることが増えている。そこで、当センターで確立したDNAを抽出する方法を利用して、皮革の鑑別技術を開発する。すなわち、抽出したDNAを基に畜種を鑑定するため、PCR分析やDNAの塩基配列解析等の技術を応用し、構造が類似した皮革のDNA鑑定を検討する。

(2)評価
部会としてA(提案通り実施)と評価する。DNAによる皮革の畜種鑑別が可能となることは、公共性の点からも期待される研究である。

熱可塑性ポリウレタン表底及びトップピースの性状調査

(1) 研究の目的・内容
ポリウレタン製の表底やトップピースは、短期間での劣化が問題となり、その原因究明と対策に関する研究が行われた時期があった。その後、技術開発が進み、国内でも高品質を謳った熱可塑性ポリウレタンが製造され、広く使用されている。しかし、これら最新の熱可塑性ポリウレタンの品質については未知の部分もあり、その性状に関する情報が求められている。また、一方では海外産低価格靴に使われているポリウレタンの品質に関する情報が求められている。そこで、靴メーカーのより適切な素材選びを手助けすることを目的として、日本国内で製造された主成分及び硬度が異なる熱可塑性ポリウレタン及び海外産低価格靴から採取したポリウレタン試料について性状調査を行う。

(2) 評価
部会としてA(提案通り実施)と評価する。標記課題を推進することは、靴の安心安全に資する研究と考えられる。